【アルバムレビュー】Chance the Rapper『Coloring Book(カラーリング ・ブック)』

BY

※本ページにはアフィリエイト広告(PR)が含まれます

洋楽コラム

今回のレビューはChance the Rapper(チャンス・ザ・ラッパー)4枚目のミックステープ「Coloring Book(カラーリング ・ブック)」

ただのHip hopにとどまらず豪快なオーケストレーションやジャズなど様々な要素の融合がなされただけでなく、それまでの配信スタイルを覆した衝撃のミックステープです。

ミックステープと称している本作ですが、アルバムという表記を使わないのは、ミックステープは「売っても売らなくてもいい作品で、制作者の意志によって自由に位置づけできる」という意味を持つからです。

その意味のとおりに本作『Coloring Book』は、2016年5月13日にあえてCDリリースをせずApple Musicで独占的にリリースをし、5月27日にようやく他のストリーミングサービスでも聴けるようになりました。

この試みの何が凄いのかというと、レコード会社と契約をしないで、フリーで音源を配信しているというところなのです。

実際に今作の「No Problem」という曲で、彼自身が「メジャー契約をしない」という意思をはっきりとラップで表明しているのです。

そして本作『Coloring Book』は、US Billboard 200においてストリームのみの配信で初めてチャートインを果たしたミックステープであり、2017年にはなんとグラミー賞でベストラップアルバムを受賞しました。

フリーでさらにストリーミングのみのアルバム(ミックステープ)がグラミー賞を受賞するのは初めての快挙です。

そんな有言実行でまさにチャンスを実らせたラッパーの彼が、今作で最も輝いていると思う曲が“Angels (feat Saba)”と“Blessings (reprise)/ (feat Ty Dolla $ign)”です。

Chance The Rapper ft. Saba – Angels – YouTube

Blessings (feat. Ty Dolla $ign, Anderson .Paak, BJ The Chicago Kid, Raury & Jamila Woods)) – YouTube

前者は、底抜けの明るさがとにかく特徴で教会通いしていない方でもゴスペルのハッピーな雰囲気を感じることができると思います。

しかしながら、明るいだけではなくシンセのバッキングや泣きのメロにより優しさを感じることができます。ここにモダンなサウンドをモノにする彼のセンスが現れているのです。

後者については、アルバム最後の曲で、イントロはマイナー調の少し悲しいコーラスから始まります。そこから今までの系譜を語るかのようなラップが始まり、どういうところに繋がっていくのだろうと、聴いていると、

フック(サビ)で「準備はできたか?」と何度も呼びかけ始めるのです。ここに、チャンス・ザ・ラッパー成功哲学が表されているのではないかと思います。

おそらく今回のようなスタンスをとることで、多くの批判や壁が彼の前に立ち塞がってきたと思います。しかしながら、彼はそれをポジティブに受け止め、進み続けてきたのです。

Hip hopファンだけでなく様々な方に聴いて欲しいと感じる、勇気と優しさをもらえるアルバム(ミックステープ)でした。

■ Coloring Book トラックリスト

1. All We Got (ft. Kanye West & Chicago Children’s Choir)
2. No Problem (ft. Lil Wayne & 2 Chainz)
3. Summer Friends (ft. Jeremih & Francis & the Lights)
4. D.R.A.M. Sings Special
5. Blessings (ft. Jamila Woods)
6. Same Drugs
7. Mixtape (ft. Young Thug & Lil Yachty)
8. Angels (ft. Saba)
9. Juke Jam (ft. Justin Bieber & Towkio)
10. All Night (ft. Knox Fortune)
11. How Great (ft. Jay Electronica & my cousin Nicole)
12. Smoke Break (ft. Future)
13. Finish Line / Drown (ft. T-Pain, Kirk Franklin, Eryn Allen Kane & Noname)
14. Blessings (ft. Ty Dolla Sign, Raury, BJ the Chicago Kid & Anderson .Paak)

WRITER

洋楽なら幅広く聴きますが特にHIP HOP、R&B、ソウル、ファンクを好みます。

人気記事