ミーク・ミル

プロフィール

Meek Mill（ミーク・ミル）は、ペンシルベニア州フィラデルフィア出身のラッパー。本名はRobert Rihmeek Williams（ロバート・リメーク・ウィリアムズ）。

生い立ち

ロバート・リーミーク・ウィリアムズは1987年5月6日、アメリカ・ペンシルベニア州フィラデルフィアの南部地区で生まれた。母親はKathy Williams（キャシー・ウィリアムズ）で、姉にNasheema Williams（ナシーマ・ウィリアムズ）がいる。母キャシーは貧困の中で育ち、若くして母親を亡くした。ミークの父親は、ミークが5歳のときに強盗未遂事件で射殺されている。叔父によると、父親は「家族の中の厄介者」だったという。父の死後、母は子ども2人を連れて北フィラデルフィアに移り、バークス・ストリートの3部屋のアパートで暮らした。生活は苦しく、母は髪を切る仕事や雑用をこなし、時には万引きもして家計を支えた。

幼い頃のミークは内気で、家ではあまり話さない子どもだった。一方で、父方の叔父であるDJのGrandmaster Nell（グランドマスター・ネル）と交流を持つようになり、彼から大きな影響を受ける。グランドマスター・ネルは1980年代後半のフィラデルフィア・ヒップホップ界で先駆的なDJとして知られ、Will Smith（ウィル・スミス）やDJ Jazzy Jeff（DJジャジー・ジェフ）にも影響を与えた人物である。この影響をきっかけに、ミークはヒップホップに強く惹かれていった。また、地元のインディペンデント・ラッパーであるChic Raw（シック・ロー）やVodka（ウォッカ）の映像作品を見てラップの技術を学んだ。

10代の頃にはMeek Millz（ミーク・ミルズ）という名でラップバトルに参加し始め、夜遅くまでノートにリリックを書き溜めるなど創作に没頭した。その後、友人3人とともにThe Bloodhoundz（ザ・ブラッドハウンズ）というグループを結成し、キンコーズで空のCDとケースを購入し、自作の楽曲を焼いて友人たちに配り広めるなど、独自の方法で音楽活動を展開していった。

初期のキャリア

10代の頃に結成したラップグループ、ザ・ブラッドハウンズは4本のミックステープを出すまで活動した。2006～2008年にかけて、ミーク・ミルは『The Real Me』、『The Real Me 2』、『Flamers』の3本のソロ・ミックステープを発表。2009年には4作目『Flamers 2: Hottest in tha City』をリリースし、「I'm So Fly」、「Prolli」、「Hottest in the City」などが注目を集めた。

この作品をきっかけに、フィラデルフィアの音楽業界で影響力を持つ215アフィリアテッド・レコードのCharles "Charlie Mack" Alston（チャールズ“チャーリー・マック”オルストン）がミークを高く評価し、マネジメント契約を結んだ。同年、ミークはグランド・ハッスル・レコードの創設者T.I.とも出会い、T.I.の推薦でワーナー・ブラザースとも会談するなど複数の契約オファーを受ける。最終的にミークは「一生に一度の機会」としてT.I.のレーベルを選んだ。しかし、その直後にドラッグと銃の所持による罪で収監されてしまう。

2009年に釈放されたミークはグランド・ハッスル・レコードの下で活動を継続し、DJ Drama（DJドラマ）と組んで『Flamers 3: The Wait Is Over』を2010年3月に発表。これはDJドラマの「Gangsta Grillz」シリーズとして扱われ、「Rosé Red」がプロモ曲となった。その後、この曲はT.I.、Rick Ross（リック・ロス）、Vado（ヴァド）が参加したリミックス版も制作された。リック・ロスはフィラデルフィアを訪れた際、Twitterで「誰とコラボすべきか」と尋ねたところ、ミークの名前が圧倒的に多かったため、参加を決めたという。しかし、ミークとT.I.の双方が抱えた法的トラブルにより、ミークはグランド・ハッスル・レコードから公式アルバムを出すことなく2010年に契約終了。同年には、ミークが主演を務める映画『Streets』もリリースされている。

2011年2月、リック・ロスはミーク・ミルをWale（ワーレイ）と共に自身のレーベル「メイバック・ミュージック・グループ（MMG）」へ正式に迎え入れた。同年3月には、ミークはXXL誌の「Freshman Class of 2011」に選出された。ミークはその年、MMGのコンピレーション『Self Made Vol.1』からリック・ロスを迎えたデビュー・シングル「Tupac Back」をリリースし、続いて「Ima Boss」も発表。この曲は後にT.I.、Birdman（バードマン）、Lil Wayne（リル・ウェイン）、DJ Khaled（DJキャレド）、Swizz Beatz（スウィズ・ビーツ）らを迎えたリミックス版が制作され、ビルボードホット100で51位を記録し、当時の代表曲となった。

2011年8月、ミークはミックステープ『Dreamchasers』をリリースし、「House Party」などの楽曲が評価され、リック・ロス、Yo Gotti（ヨー・ゴッティ）、Beanie Sigel（ビーニー・シーゲル）らが参加した。2012年2月、MTVはミーク・ミルを「Hottest MCs in the Game」ランキングで7位に選出。同年5月7日、ミックステープ『Dreamchasers 2』を公開し、DatPiffでは6時間で150万ダウンロードを記録するほどの人気となった。5月10日にはロック・ネイションとマネジメント契約を結んだ。

デビュー後のキャリア

2012年6月19日、『Dreamchasers 2』収録曲「Amen」がデビュー・アルバムのリードシングルとして発売。デビュー作『Dreams & Nightmares』のリリース前にはMariah Carey（マライア・キャリー）やNas（ナズ）から強力な支持を受け、2012年10月30日にアルバムを発表した。初週売上は165,000枚でビルボード200の2位にデビューした。2週目は41,000枚を売り上げ、8位に後退した。2012年10月26日、ミーク・ミルは自身のレコードレーベル「ドリーム・チェイサー・レコード」の立ち上げ、主力アーティストのLouie V. Gutta（ルイ・V・ガッタ）、Lee Mazin（リー・メイジン）、Goldie（ゴールディ）らを迎え入れると発表した。この時点では自分のクルーに近い形の小規模なインプリントであった。

『Dreams & Nightmares』のリードシングル「Amen」がリリースされると、フィラデルフィアの牧師Jomo K. Johnson（ジョモ・K・ジョンソン）が、曲の歌詞内容を理由にミーク・ミルのボイコットを呼びかけた。ジョンソンは声明で、「ヒップホップファンとして、イエス・キリストを信じるフィラデルフィアのすべてのラップファンに、ミーク・ミルがこの明らかな不敬を認めるまで彼をボイコットするよう求める。北フィラデルフィアの住民であり牧師として、私はミークの“フッドパス”を取り消す」と述べた。2012年7月17日、BETの番組『106 & Park』でミーク・ミルは、「どんな牧師や教会もラップ音楽を認めないと思う。ラップには悪い内容が多いからだ。でも結局のところ、これは現実を表現している。自分は宗教を不敬するつもりはなかった」と語った。

ミーク・ミルは『Dreamchasers 3』をリリースした。このミックステープにはリック・ロス、Akon（エイコン）、Future（フューチャー）、Waka Flocka Flame（ワカ・フロッカ・フレイム）、ワーレイ、Trina（トリーナ）、Jadakiss（ジェイダキス）ら多くのゲストが参加した。当初は2013年5月6日のリリース予定だったが延期され、最終的に同年9月29日に発表された。

2013年11月、ミルは2枚目のスタジオ・アルバム制作が半分まで進んでいると明かし、2014年3月にはアルバムタイトルが『Dreams Worth More Than Money』になると発表した。最終的にこのアルバムは2015年6月28日にリリースされ、7月18日付のビルボード200で1位を獲得した。その後、ミルはInstagramでミックステープ『DC4』の楽曲をプレビュー。敵対関係にあったドレイクの「Back to Back」のリミックスや「I'm the Plug」のリミックスも予定されていたが、商業作品としてリリースされることになったため収録されなかった。2016年1月16日と30日にはEP『4/4』と『4/4 Pt.2』を公開し、2016年10月28日に『DC4』を正式にリリースした。

2017年7月21日には3枚目のスタジオ・アルバム『Wins & Losses』をリリース。2018年11月16日には4枚目のスタジオ・アルバム『Championships』を発表し、11月30日にリリース。批評家から好評を得てビルボード200で初登場1位を記録し、22.9万ユニットを売り上げた。2019年7月24日、ミーク・ミルはドリーム・チェイサー・レコードをロック・ネイションとのジョイントベンチャーとして正式に発足することを発表した。

2020年6月にはGeorge Floyd（ジョージ・フロイド）殺害事件後の抗議を受けて「Otherside of America」を発表。同年11月20日にはEP『Quarantine Pack』をリリースし、42 Dugg（42ダグ）、Vory（ヴォリ）、Lil Durk（リル・ダーク）が参加した。また、HBO Maxで公開された映画『Charm City Kings』に出演し、好評を得た。

ミルは2020年末のアルバムリリースを示唆していたが実現せず、5枚目のスタジオ・アルバム『Expensive Pain』は2021年10月1日にリリースされた。同作はビルボード200で3位（95,000ユニット）を記録した。ミルはアルバムの低売上についてアトランティック・レコードを批判し、PnB Rock（PnBロック）やRoddy Ricch（ロディ・リッチ）を自身のレーベルに迎えることを妨害されたと主張。また9か月間新作のリリースを制限されていたとも述べ、レーベルからの解放を要求した。

2022年7月11日、ミルはロック・ネイションとのマネジメント契約終了を発表。ただし関係は良好であり、共同で進める刑務所改革団体「REFORM Alliance」での活動は継続すると説明した。