エラ・ラングレー、カントリー界で最も注目される若手女性シンガー

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洋楽コラム

エラ・ラングレー、カントリー界で最も注目される若手女性シンガー
Photo Credit Caylee Robillard

当コラムでは今年、アレックス・ウォーレンやオリヴィア・ディーンをご紹介させて頂きましたが、カントリーのジャンルでも注目すべきアーティストがいます。

それがElla Langley(エラ・ラングレー)です。

2017年にキャリアをスタートさせ、2023年にメジャー・デビュー。最新シングル「Choosin' Texas」はビルボードホット100でクリスマスシーズンに突入しているにもかかわらず11位まで上昇しました。今後クリスマス・ソングに押される形になったとしても、年明け注目の1曲です。

YouTubeElla Langley - Choosin' Texas - YouTube

早くから開花した才能

エラ・ラングレーは1999年生まれの26歳。アラバマ州ホープハル出身。幼い頃から音楽に触れ、地元のバプテスト教会での歌唱や、地域社会での非公式なジャムセッションに参加していました。祖父と一緒にピアノの前に座り、アメリカの伝統的なフォークソング「Frog Went a-Courtin'」を歌うのが大好きだったそう。

2016年、彼女は高校のフーパー・アカデミーで行われたタレントショーに出演し、初めて人前で演奏しました。その後、地元の会場で演奏するようになりました。翌2017年には初の楽曲「Clear the Clouds」を書きますが、共作したのが彼女の叔母。音楽家系であることがわかります。

YouTubeElla Langley - Clear the Clouds - YouTube

2018年に自主制作でデビュー・シングル「Perfect」をリリース。(※メジャー・デビュー後に初期の楽曲の多くと共にストリーミングプラットフォームから削除されています。)テネシー州ナッシュビルに拠点を移してからは地元のソングライティング・コミュニティに深く関わるようになりますが、COVID-19パンデミックの間、思うような活動ができなくなります。しかしこれをきっかけとしてライブストリーミングとオンラインでの存在感の拡大に重点を移し、特にTikTokでの存在感を高めるようになります。

2021年にはソニー・ミュージックパブリッシング・ナッシュビルと初の出版契約。2023年2月にソニーミュージック・ナッシュビル、コロムビア・レコードとレコード契約を締結し、デビューEPとなる『Excuse the Mess』をリリースしました。EPからはチャート入りしなかったものの「Country Boy's Dream Girl」、「That's Why We Fight」の2曲がRIAA(米国レコード協会)でゴールド認定を受けるヒットとなります。

YouTubeElla Langley - Country Boy's Dream Girl - YouTube

YouTubeElla Langley, Koe Wetzel - That's Why We Fight - YouTube

そして2024年、デビュー・スタジオ・アルバム『Hungover』に向けてリリースされたメジャー・デビュー・シングル「You Look Like You Love Me」がTikTokでバイラルとなり大ヒット。ゲスト参加したカントリーシンガー、ライリー・グリーンとの相性の良さもあってビルボード・カントリー・エアプレイ・チャートで1位を記録。ビルボードホット100にも初エントリーを果たし、第58回カントリーミュージック協会賞で年間最優秀ミュージカル・イベント賞を受賞しました。

YouTubeElla Langley (feat. Riley Green) - you look like you love me - YouTube

その後も快進撃は続き、続くシングル「Weren't for the Wind」はビルボードホット100で18位とトップ20入りを果たしました。そして今年に入り、ゲスト参加した楽曲も次々とヒット。ライリー・グリーンとのデュエット「Don't Mind If I Do」はビルボードホット100で32位、カントリー・エアプレイ・チャートで3位。ラッパーのBigXthaPlugと共演した「Hell at Night」はビルボードホット100で35位とトップ40入りを果たしています。

女性のカントリーアーティストがメジャー・デビュー以降ビルボードホット100でトップ40入りを連発するのはかなり異例で、近年ではレイニー・ウィルソンが挙げられますが、それ以前ではテイラー・スウィフト、キャリー・アンダーウッドなどの成功例を除けばマレン・モリスくらいでかなり少ないことがわかります。

そして10月にリリースされた最新曲「Choosin' Texas」が最新のビルボードホット100で11位まで上り詰めている状態です。この人気には特殊な理由があって、ビルボードホット100を構成するストリーミング、セールス、エアプレイのうち、クリスマスソングの影響を受けにくいエアプレイのカントリージャンルで勢いが増しているということが挙げられます。

ポップやR&Bなどはクリスマスソングが多く放送されるという点で不利ですが、カントリーラジオはほとんどクリスマス曲を流さないという点で他ジャンルより有利に働くことがあるそうです。とは言え来週以降はさすがに押されてしまうと思いますが、大前提としてミランダ・ランバート、ルーク・ディック、ジョイベス・テイラーとの共作であることから楽曲自体の良さがヒットにつながっていると言えるので、シーズン明け、つまり来年の動向が非常に注目できます。

例外的に突出した成功の理由

エラ・ラングレーの成功が突出しているように見える理由のひとつには、女性カントリーアーティストが総合チャート上位に進出することが歴史的に難しいという事実があります。カントリー・ラジオは長年にわたり男性アーティストが優勢で、新人女性アーティストはオンエア獲得に時間を要する傾向があります。この影響で総合チャートに到達する前に勢いが鈍ってしまうことが多い中、エラ・ラングレーはそうした構造的な不利をほとんど受けず、ラジオで確実に成長しながらストリーミングでも同時に支持を広げるという、極めて珍しい成功パターンを示しています。新人女性アーティストがこの両軸を同時に伸ばす例は多くありません。

さらに、彼女の楽曲はTikTok主導のバイラルヒットをきっかけに、純粋に楽曲そのものの魅力によって広がっていると分析されています。現代のカントリーではSNS主体の単発ヒットが増えるなか、エラ・ラングレーの場合は歌詞・メロディ・歌声の表現力が複数のプラットフォームで安定した支持につながっており、この点も近年の新人としては珍しい特徴です。

また、多くの新人が1曲で注目を浴びても次作で勢いを維持できないケースが多いなか、彼女はEP期から注目を集め、ソングライターとして評価を高めながら、メジャーデビュー曲「You Look Like You Love Me」の成功以降も成績が途切れていません。この持続性は、近年ではレイニー・ウィルソン以降ほとんど例がありません。

さらに、新人の女性カントリーアーティストがビルボードホット100でトップ20入りすること自体が、歴史的に極めて稀です。実際、この領域に到達した例はテイラー・スウィフト初期やキャリー・アンダーウッドのデビュー期など、ごく限られたケースに留まっています。レイニー・ウィルソンも自身のリード曲でトップ20入りという記録はなく、エラ・ラングレーのチャート成績はこの希少なグループに並ぶもので、総合チャートでの成功度は新人として突出しています。

加えて、「You Look Like You Love Me」で共演したライリー・グリーンとの関係をめぐってSNSでさまざまな憶測が出たことも、話題性を高める一因となりました。本人たちは交際を否定しており、噂が事実である証拠はありませんが、ミーガン・モロニーを含む三角関係をめぐる推測は一定の注目を集めました。 エラ・ラングレーはライブでその噂を否定したうえで「Choosin' Texas」を披露しており、この流れがファンの熱量を高め、結果的にプロモーション的な効果を持った可能性も指摘されています。

こうした複数の要素が重なったことで、女性カントリーが本来抱える高いハードルを越えつつ、デビューから短期間で複数の明確なヒットを積み上げ、それらが総合チャートにも反映されるという 例外的な成功モデルを示しています。

エラ・ラングレーの魅力

エラ・ラングレーの魅力は、懐かしさを感じるサウンド面、そして若年層に人気を得ているリアルでストレートな歌詞にあります。

父親のトラックではクラシックロックやカントリー、母親の車では80年代のニューウェーブやフォークを聴いて育ったというのも大きく、サザンロック、フォーク、カントリーの影響を融合させ、古き良きサウンドを軸として自身のものにしています。

加えて人生や恋愛について包み隠さず語る歌詞は、若い世代のファンを魅了しています。

こうした魅力が、今のエラ・ラングレーを「偶然バズった新人」ではなく、「長く残るアーティスト」へと押し上げているのかもしれません。チャートでの成功だけにとどまらず、彼女の持つ声、言葉、存在感そのものが、これからのカントリー・ミュージックの新しい輪郭を形づくっていくように感じます。

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洋楽まっぷ編集部

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