ロックジャンルの一つである『シューゲイザー』
複雑でノイズ感のあるギターサウンドと甘美なメロディー。そして囁くように歌い上げるボーカルがシューゲイザーの特徴です。
主に1990年代初頭から流行り始めたこのジャンルですが、一体どんな歴史を歩んできたのでしょうか。
シューゲイザーが名付けられた由来から歴史を紐解く
シューゲイザーとは『Shoe=靴』+『Gazer=見る人』を合わせた造語です。
その名の通り、下を向きながらギターをかき鳴らす様相から名付けられました。
名前の由来を読んでもわかる通り、シューゲイザーという名称に音楽的な要素はありません。
当時は陰鬱なサウンドが流行っていたのです。
その中でも轟音でギターを鳴らしながら馴染みやすいメロディーと囁くボーカルが特徴の本ジャンルは勢力を伸ばしていきました。
シューゲイザーを簡単に言うなら「爆音の楽器+繊細なメロディー+小さいボーカル」と覚えておけば問題ありません。
イギリスの音楽雑誌「サウンズ」が名付けたジャンルなのですが、由来からも当時は“でっち上げのジャンル”と言われていました。
一部のアーティストからは「ふざけたジャンル名を勝手に付けるな」と怒りを買ったそうです。
シューゲイザーを先駆けた代表的なアーティストを紹介
由来がわかったところでシューゲイザーを代表するアーティストを紹介していきます。
My Bloody Valentine(マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン)
My Bloody Valentine - Only Shallow
日本では「マイブラ」の略称で知られている本バンド。
これぞ「シューゲイザー」というサウンドです。
本来の意味でシューゲイザーを表現できているのはマイブラだけという意見もあるほど。
破滅的な楽器の音と甘いボーカルが奇跡的なバランスで融合しています。
ここまでロックを芸術として昇華できているアーティストはそう多くないでしょう。
Ride(ライド)
Ride - Vapour Trail
芯に響く轟音のツインギターと清涼感マックスのボーカルで90年代にブレイクを果たした『Ride』
紹介した「Vapour Trail」は単調なリフ、優しいボーカルとメロディーが繰り替えされているだけです。
それだけなのに何故か涙腺が緩んでしまいそうになります。
「君を愛しぬくには時間が足りない」と諦めたように歌うこの曲。
諦観と美しさを4分で表現しきるセンスに脱帽するばかりです。
どのアーティストも、どこか陰を含んでおり今にもいなくなってしまいそうな雰囲気を醸し出しているのが特徴です。
そんな儚い存在だからこそ、一部のリスナーから猛烈な支持を得ていたとも言えるでしょう。
現代に生きるシューゲイザー。James Blakeが魅せる進化
シューゲイザーは90年代に流行ったあと勢いをひそめました。どうしてもポップとは言い難いジャンルなので、廃っていくのは仕方ないとも言えますが…。
しかし、その後も続々とフォロワーは登場しています。
数多くいる「シューゲイザーの血を引くもの」の中でも、今回おすすめするのが『James Blake(ジェイムス・ブレイク)』
彼の音楽ジャンルはダンスミュージックの一種である「ダブステップ」と呼ばれることが多いです。
ですが、か細く美しいボーカルと音量大きめのサウンドはまさにシューゲイザーです。
James Blake - Radio Silence
James Blake - The Wilhelm Scream
2021年9月には新譜も発売される彼ですが、新曲では自分自身の在り方について複雑なサウンドと綺麗なボーカルで歌い上げています。
James Blake - Say What You Will
シューゲイザーの歴史とこれからのまとめ
人の心の弱い分をかき鳴らしてくれるのが、シューゲイザーが昔から支持される理由の一つです。
きっと音楽シーンのど真ん中を走ることはないかもしれません。
しかし、これからもシューゲイザーは音をかき鳴らし続けます。
不安感・憂鬱な感情を消すのではなく、寄り添ってほしいときがあるはず。その時シューゲイザーはあなたの味方となるでしょう。