ソウル・アサイラム、4年ぶり新作アルバムをこの秋リリース!改めて結成からの歴史を振り返る

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洋楽コラム

Soul Asylum(ソウル・アサイラム)が4年ぶりとなる新作アルバム『Slowly But Shirley』をこの秋リリースすることを発表し、先月リード曲「High Road」がリリースされました。

近年では3作連続で4年の期間が空いてリリースされており、『Slowly But Shirley』は13枚目のスタジオ・アルバムとなります。

今回は改めて、ここまでのソウル・アサイラムを振り返りながら、新曲についても解説していこうと思います。

ソウル・アサイラムの現メンバー

現在のソウル・アサイラムはフロントマンであり初期メンバーのDave Pirner(デイヴ・パーナー)、2005年に加入したドラムのMichael Bland(マイケル・ブランド)、2016年に加入したリードギターのRyan Smith(ライアン・スミス)、2020年に加入したベースのJeremy Tappero(ジェレミー・タペロ)の4人組。全盛期(90年代)にいたメンバーはデイヴ・パーナーだけになりました。

結成までの経緯

バンドはデイヴに加えギタリストのDan Murphy(ダン・マーフィー)、ベーシストのKarl Mueller(カール・ミュラー)の3人によって1981年に結成されたLoud Fast Rules(ラウド・ファースト・ルールズ)というバンドが前身。デイヴは当初ドラムも兼任していましたが、ドラマーのPat Morley(パット・モーリー)が加入したことによりリード・ボーカルとギターに変わりました。

彼らは同級生や幼馴染などといった始まりではなく、ダン・マーフィーはもともとミネアポリスでギタリストとして活動していましたし、デイヴは独学でドラムを覚えたあと、最初のバンドがラウド・ファースト・ルールズでした。具体的な情報はあまり出てきませんが、バンドを組むうえでミネアポリスで知り合った彼らが意気投合して結成したと推測できます。

パット・モーリーが加入したのは1983年。それまでの約2年間は3人で活動し、パット加入のタイミングでバンド名をSoul Asylum(ソウル・アサイラム)に変更しています。

ソウル・アサイラムはミネソタのインディー・ロック・シーンに欠かせない存在となり、着実に名声を高め、翌1984年には地元レーベルのTwin/Toneレコードからデビュー・アルバム『Say What You Will... Everything Can Happen』をリリースしました。

アルバムはBob Mould(ボブ・モールド)がプロデュースしており、彼の所属していたバンドHüsker Dü(ハスカー・ドゥ)のツアーに参加した1985年、これをきっかけに知名度が上がります。

Twin/Toneレコードからは計3枚のアルバム『Made to Be Broken (1986)』、『While You Were Out (1986)』をリリース。ツアーでの知名度や評価が上がる一方で、大多数の聴衆やラジオ市場では知られていないままでした。パットは『Made to Be Broken』のリリース前に脱退しており、以降はGrant Young(グラント・ヤング)がドラムを務めていました。

解散危機

1988年にA&Mレコードと契約し、2枚のアルバム『Hang Time (1988)』、『And the Horse They Rode In On (1990)』をリリース。『And the Horse They Rode In On』からのシングルはビルボードのオルタナティヴ・エアプレイ・チャートにランクインするようになるものの、どちらも商業的な結果は残せませんでした。

A&Mレコードと言えば70年代にThe Carpenters(カーペンターズ)が成功したことでその地位も向上し、80年代はThe Police(ポリス)やJanet Jackson(ジャネット・ジャクソン)などが所属していました。そこで結果が出せなかったこともあり、バンドは解散も考えていたようです。これは商業的な問題に加え、当時デイヴが聴覚障害を患っていたことも拍車をかけました。

ただこの問題をきっかけとしてデイヴはエレキからアコースティック・ギターで楽曲制作し始めたことがバンドの転機となります。

「耳が聞こえなくなると思ったので、大音量のエレクトリック・ミュージックの演奏をやめて、アコースティック・ギターで曲作りを始めました。それが私とバンドにとって決定的な転機となり、あらゆる面で状況が改善し始めました。」

Grave Dancers Union

1990年代初頭、A&Mレコードを離れると新たにコロムビア・レコードと契約。

アコースティック・ギターで曲作りを始めていたデイヴは、このタイミングで代表曲でもある「Runaway Train」を書き上げます。

『Grave Dancers Union』のレコーディング中、プロデューサーのMichael Beinhorn(マイケル・ベインホーン)はドラマーのグラントの演奏に不満を抱き、Sterling Campbell(スターリング・キャンベル)を起用。アルバムの半分ずつを演奏することになりますが、バンドがそれを認めたがらず、スターリングはパーカッショニストとしてクレジットされました。

バンドは「Runaway Train」で一気にブレイクしますが、その前から予兆がありました。

リードシングルとなった「Somebody to Shove」はビルボードのオルタナティヴ・エアプレイ・チャートで初の1位を獲得。メインストリーム・ロック・チャートでもトップ10入りを果たしました。

続く2枚目のシングル「Black Gold」も好調でアルバムは「Black Gold」リリース前の1992年10月にリリースされ、「Runaway Train」は3枚目のシングルとして翌1993年にリリースされました。

1993年6月12日付のビルボードホット100で87位に初登場。71位、57位、41位、34位、24位、19位、18位、11位、8位とトップ10入りを果たすまで一度も順位を落とさず、3週連続5位が最高順位となるヒットとなりました。他にもニュージーランド、ノルウェー、スウェーデン、スイスでは2位に達し、他のヨーロッパ諸国のチャートでもトップ5以内に入りました。

何より話題となったのはミュージック・ビデオ。

実際に行方不明となっている子供たちの写真と名前を次々と映す構成でTony Kaye(トニー・ケイ)が監督を務めました。

ビデオの終わりにデイヴが「この子供たちの一人をあなたが見た場合、もしくはあなたがこの子供自身だった場合は、この電話番号に電話してください」と呼びかけて行方不明の子供たちのヘルプラインの電話番号を表示する内容となっています。

いくつものパターンが作られ国毎はもちろんアメリカでも地域別に異なる映像が用意され、MTVで反映に放送されました。

トニー・ケイは後に26人の子供が発見されたと明かしており、残念な結果に終わってしまったパターン、今現在も行方不明とされている子供たちもいるようです。

ビデオの話題性も貢献し「Runaway Train」は第36回グラミー賞 最優秀ロック・ソングを受賞。バンドの代表曲となり、アルバムもバンド最大のヒット作となりました。

YouTubeSoul Asylum - Runaway Train - YouTube

ウィノナ・ライダーとの関係

デイヴが音楽活動以外にも当時メディアに追われるきっかけとなったのが、Winona Ryder(ウィノナ・ライダー)との交際。

1993年に行われた「MTVアンプラグド」の収録で知り合ったことをきっかけに、「Runaway Train」の次にシングル化された「Without a Trace」のミュージック・ビデオに出演しました。

ノニー(ウィノナ・ライダーの愛称)は暗殺者を演じており、男性の服装なため、よく見ないとわからないかもしれません。ちなみに知り合った時点でノニーはJohnny Depp(ジョニー・デップ)と別れたばかり。

YouTubeSoul Asylum - Without a Trace - YouTube

2人はすぐに仲良くなり、ノニーはミネアポリスにある人気ロッカーの家に引っ越すことを決めます。

そんな中バンドは1995年に次のアルバム『Let Your Dim Light Shine』をリリースしヒット。米国ビルボードのアルバムチャートでは6位と初のトップ10入りを果たすも、商業的には前アルバムを超えられず、デイヴがウィノナ・ライダーとの交際で丸くなったとの指摘も相次ぎました。

当時のノニーは『ビートルジュース』や『シザーハンズ』などで日本でも知られていましたが、早くからゴールデングローブ賞にノミネートされるなど特にアメリカでの知名度や人気が高かった一方で、共演者と交際が目立ったことでも知られていました。

そんなノニーの人気はバンドを上回り、ライヴではデイヴがいちいちステージでガールフレンドは会場にいないとアナウンスしなければならない状況だったそう。2人は1997年頃に別れることに。

ジャンルの終焉

『Let Your Dim Light Shine』がリリースされる前にグラントは正式に解雇されスターリングに変わりましたが、次のアルバム『Candy from a Stranger』のリリース前に脱退しました。

どちらも『Grave Dancers Union』のセールスを超えることはできず、バンドはコロムビア・レコードから離れることになります。

当時のコメントとしてデイヴは、「悲しいことですが、グランジ・ロック・バンドというジャンルは完全に飽和状態になり、人々は何か新しいものを求めていました。」と語っています。

2000年代以降の活動

バンドは8年間、アルバムをリリースしない状況となります。

この間、デイヴは映画のサウンドトラックを手掛けたり音楽を担当したり、2002年にはソロ・アルバム『Faces & Names』をリリースしています。

カールは2004年に食道癌と診断されたことでバンドはミネアポリスで多くのバンドと共にチャリティー・ライヴを開催。カールは寛解期だったこともあり、ライヴにも参加し、新作アルバム『The Silver Lining』の録音に参加していましたが、翌2005年位再発し、6月17日に亡くなりました。アルバムは翌2006年にリリースしました。

この8年間のあいだにドラマーのIan Mussington(イアン・マシングトン)が在籍していましたが、アルバムには一切かかわらず脱退。Prince(プリンス)のドラマーだったマイケル・ブランドがレコーディングに参加し、ベーシストの追加要員としてTommy Stinson(トミー・スティンソン)が参加。後に正式メンバーとなります。

アルバムはソニー・ミュージックエンタテインメントの子会社の一つ、レガシー・レコードからリリースされました。

主にライヴを中心に活動していましたが、レガシー・レコードからは1枚しかリリースできず、かつて日本コロムビア傘下のサヴォイ・レーベル・グループに属していたインディーズ・レーベルの429レコードから4年の期間を経て2012年にアルバム『Delayed Reaction』がリリース。

2012年はバンドの大きな転換期となり、トミー・スティンソンはガンズ・アンド・ローゼズのツアーをきっかけに脱退。初期メンバーのダンも私生活に専念するために脱退。ベーシストのWinston Roye(ウィンストン・ロイ)、ギタリストのJustin Sharbono(ジャスティン・シャーボノ)が加わり、初期メンバーはデイヴのみとなります。

429レコードからも1枚のアルバムしかリリースできず、今度はカナダのエンターテイメント企業、エンターテインメント・ワンから次のアルバムをリリース。再び4年空いて2016年に『Change of Fortune』をリリースしました。この年、来日公演も行ったことで日本でも話題となり、日本限定のベスト盤もリリースされました。

2020年にはロサンゼルスのインディーズ・レーベル、ブルー・エラン・レコードからアルバム『Hurry Up and Wait』をリリース。ツアーはCOVID-19パンデミックにより中断されました。この間、ウィンストンが脱退し、新たにベーシストのJeremy Tappero(ジェレミー・タペロ)が加入。現在のメンバーとなります。

2024年秋、新作アルバムをリリース

90年代に契約していたコロムビア以来、同じレーベルから2枚目のアルバムがこの秋リリースされます。

ブルー・エラン・レコードからリリースされる13枚目のスタジオ・アルバム『Slowly But Shirley』は1990年のアルバム『And the Horse They Rode In On』のプロデュースを担当したSteve Jordan(スティーブ・ジョーダン)と共に地元のミネアポリスでレコーディングされました。

リード曲「High Road」は荒々しくパンクらしさも匂わせるエネルギッシュな1曲となっています。

YouTubeSoul Asylum - High Road - YouTube

メンバーの入れ替わりが続くソウル・アサイラムですが、曲は一貫してデイヴ・パーナーが制作していることもあり、どこか懐かしさを感じさせるアルバムとなることは間違いなさそうです。

■『Slowly But Shirley』トラックリスト
1. The Only Thing I'm Missing
2. High Road
3. You Don't Know Me
4. Freeloader
5. Tryin' Man
6. Freak Accident
7. If You Want It Back
8. Waiting on the Lord
9. Trial By Fire
10. Makin' Plans
11. Sucker Maker
12. High & Dry

参考情報:Soul Asylum - Wikipedia
Enter the Soul Asylum
Artist of the Month: Soul Asylum
Dave Pirner Reveals the Roots of Soul Asylum’s Unstoppable Hit “Runaway Train” | GuitarPlayer
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WRITER

洋楽まっぷ編集部

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