【アルバムレビュー】Tom Misch『Beat Tape 1(ビート・テープ1)』

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洋楽コラム

今回のレビューはTom Misch(トム・ミッシュ)によるリリース初のミックステープ「Beat Tape 1(ビート・テープ1」

今やネオソウル界では知らない人のいない若き天才ギタリスト、トム・ミッシュが弱冠19歳でシーンに衝撃を与えた完全セルフプロデュースの作品です。

かつて音楽学校でジャズなどを学んでいた彼は、十代の半ばからSoundCloudなどで自作の音源を発表し始めました。その過程で早くもギタリストだけでなくコンポーザーとしての才能を発揮し、ジョーダン・ラカイ、ロイル・カーナーなどとの共演でよりその精度を高めていきました。

そして今作は特に、彼の培ってきた伝説のトラックメイカーJ・ディラへのオマージュが溢れている作品になります。タイトルからもその正統な影響は感じられますが、その洗練されたサウンドはスラム・ヴィレッジリスペクトだけでなく、繊細で緻密なオリジナリティの溢れる魅惑のギタープレイと流れるようなメロの動きが心をぐっと掴みます。

この後に発表したデビュー・アルバムの『Geography』では世界中での大ヒットを達成し、2019年にはGREENROOM FESTIVAL ‘19へ参加するなど、ソロとしてもただのギタリストを超えたネクストレベルのアーティストして評価されています。
ジョン・メイヤーなどのスターも彼のギターヒーローの素質を今作から感じているほどでした。

楽曲に関しては、私個人的にはアルバム1曲目“The Real Thing”の入りから「おぉ!」と思わず声を出してしまいました。

Tom Misch – The Real Thing – YouTube

いきなり鍵盤のソウルフルなコード進行が響いてきて、彼がギタリストであることを忘れてしまうような衝撃でした。徐々に入ってくる上物のギターもさすがのフレージングです。

そしてアルバム8曲目の“Dilla Love”。

Tom Misch – Dilla Love – YouTube

タイトルから最高だとわかる曲なのですが、実際に聴いてみるとJ・ディラのビート感を丸パクリしているわけではなく、自分のギターの強みを活かしてジャジーに軽快さを醸しているのがさすがだと思いました。

アルバム全体を通しての感想は、弱冠19歳とは思えない深みのあるビートをここまで自分のものにする彼のセンスと、そこにまだ若さの見えるほんの少しの粗さがギターの情緒を引き立てているという点に尽きるかと思います。

星野源とのコラボなど、日本の音楽界にも影響を与える彼の今後の動きに注目したいですね。

■「Beat Tape 1」トラックリスト

1. The Real Thing
2. In A Special Way
3. Summer
4. Take Me Back
5. Keep Moving
6. Lush Lyfe
7. Epiphany
8. Dilla Love
9. Cruisin’
10. Deeper
11. Windmills of Your Mind
12. Climbing
13. Marrakech
14. Euphoric
15. Can’t Explain It
16. Maguel Chops
17. Wind (Jazzy Joint)
18. Wonder
19. You Got Me Flying

WRITER

TOY吉

洋楽なら幅広く聴きますが特にHIP HOP、R&B、ソウル、ファンクを好みます。

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