今回のレビューはChildish Gambino(チャイルディッシュ・ガンビーノ)による2枚目のアルバム「Because the Internet(ビコーズ・ザ・インターネット)」。
今作品は『This is America』で世界に衝撃を与えたチャイルディッシュ・ガンビーノによる初期の魅力が詰まった名盤です。
2013年にリリースされた今作ですが、アーティスト名を“Wu -Tang Clan”のメンバー風に名前に変換してくれるツールで決めてしまうなどの彼のお茶目さだけでなく、メッセージ性を大切にしています。こういったアーティストとしての制作スタイルの始まりが見える今作は、HIPHOPシーンの流通に革命をもたらしたラッパー・オブ・ジ・イヤーにも選ばれたニューカマー"Chance The Rapper"や、大ベテランのDRAKE、SCHOOLBOY Qなど豪華客演が揃っています。他にもAzealia BanksやJhené Aiko、Kilo Kishなど期待の新星も迎えた瑞々しい顔ぶれもあります。そしてRadiohead の名曲"Reckoner"のオマージュや、NBAのスター選手Chris Boshの豪邸で録音した事で話題を作ったりなど遊び心も忘れていません。
今作のセールスや評価に関しては、まず特筆すべきなのは2015年に開催された第57回グラミー賞において「最優秀ラップ・アルバム」にノミネートしたことです。さらにはUSのチャートでラップでは1位、R&Bでは3位を獲得し、総合7位まで昇り詰め世界中で多くのファンを集め称賛されました。
楽曲に関しては、アルバム2曲目“I. Crawl”から彼の強い信念が見えた気がします。
Childish Gambino - I.Crawl - YouTube
攻撃的なボーカルに、バラエティに富んだ、何通りも見せてくる厚みのあるコーラス、幻想的なストリングスアレンジが一見カオスに感じそうな一つ一つの要素をうまく包み込んで一つの空間に仕上げています。
そしてアルバム8曲目の“Sweatpants”。
Childish Gambino - Sweatpants ft. Problem - YouTube
とにかく音色選びとミックスが素晴らしくて、そこまで音数が多くないのにすごく繊細に耳に入ってきます。飛び道具的に使われるコーラスにおける空間エフェクトの処理が素晴らしく、何回聴いても飽きがきません。
アルバム全体を通しての印象は、「とにかく展開のさせ方が豊富で飽きない、かつ一貫したメッセージを感じる」という点の素晴らしさです。
マルチに表現を行っていく彼の作品には、形式を超えて愛されるものがあると思います。
■「Because the Internet」トラックリスト
1. The Library (Intro)
2. I. Crawl
3. II. Worldstar
4. Dial Up
5. I. The Worst Guys (ft. Chance the Rapper)
6. II. Shadows
7. III. Telegraph Ave. ("Oakland" by Lloyd)
8. IV. Sweatpants
9. V. 3005
10. Playing Around Before the Party Starts
11. I. The Party
12. II. No Exit
13. Death by Numbers
14. I. Flight of the Navigator
15. II. Zealots of Stockholm (Free Information)
16. III. Urn
17. I. Pink Toes (ft. Jhené Aiko)
18. II. Earth: The Oldest Computer (The Last Night) (ft. Azealia Banks)
19. III. Life: The Biggest Troll (Andrew Auernheimer)