今回のレビューはTyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)による4枚目のアルバム「Flower Boy(フラワー・ボーイ)」。
Kendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)の代表作と並び、グラミーを沸かせHIPHOPの新たな道を切り開いていった、アーバンで泥臭くストーリーのある作品です。
「自分の意欲が底をつくまでにどれだけのことを成し遂げられるのか。」というような趣旨の歌詞があるようにこのアルバムでは、彼自身の悲壮感を芸術に昇華しています。
流行りの音楽を追いかけるようなフォロワーではなく、自分にしかできないことをとオリジナリティーを追求、試行錯誤し、制作の段階でも日常の感情とリンクさせたようなスタイルを貫いています。
また今回のレコーディングでは、彼自身はもちろんのこと、彼が信頼するミュージシャン達のスタジオセッションにより進められました。同クルーのFrank Ocean(フランク・オーシャン)やウィルスミスの息子であるJaden Smith(ジェイデン・スミス)など様々な色が出ています。
そして今作「Flower Boy」のセールスはストリーミングと合わせて初めの週だけで約11万ユニットを達成し、ビルボード2位を達成しました。これは、リリースからの売り上げで見ると、前々作の「Wolf」を超える成功となりました。
フューチャーやロジック、ケンドリック・ラマーの同時期の数字を上回ったのは、彼の積み上げてきた思想への熱烈なフォロワーが増えたからなのではないでしょうか。
楽曲に関しては、まずは作品のセレモニー的な一曲であるアルバム1曲目“Foreword”からタイラー・ザ・クリエイターの唯一無二なサウンド感が伝わってきます。
Tyler, the Creator - Foreword (Ft. Can & Rex Orange County) - YouTube
初めはシンプルでプリミティブなビートが主体の展開なのですが、後半に行くにつれてシンセによる空間の広がりと浮遊感が生まれてきて、その世界観に引き込まれます。
続くアルバム2曲目の“Where This Flower Blooms”。
Tyler, the Creator - Where This Flower Blooms [feat. Frank Ocean] - YouTube
ソウルフルだけれども、どこかアンビエントなフレーズから始まる曲なのですが、ずっしりとしたバスドラムの音がそれをさらに引き締めているので、今までに聴いたことのないような新鮮な印象を受けます。
アルバム全体を通して、一本の映画を観ているようなワクワクと飽きのこない構成、洗練されたサウンドメイキングであっという間に彼の世界に引き込まれる心地の良いアルバムであると感じました。
彼の最新作についても別の機会でレビューできたらと思います。
■「Flower Boy」トラックリスト
1. Foreword (ft. Rex Orange County)
2. Where This Flower Blooms (ft. Frank Ocean)
3. Sometimes...
4. See You Again (ft. Kali Uchis)
5. Who Dat Boy (ft. ASAP Rocky)
6. Pothole (ft. Jaden Smith)
7. Garden Shed (ft. Estelle)
8. Boredom (ft. Rex Orange County and Anna of the North)
9. I Ain't Got Time!
10. 911 / Mr. Lonely (ft. Frank Ocean and Steve Lacy)
11. Droppin' Seeds (ft. Lil Wayne)
12. November
13. Glitter
14. Enjoy Right Now, Today