今回のレビューはGinger Root(ジンジャー・ルート)によるデビュー・スタジオ・アルバム「Spotlight People(スポットライト・ピープル)」。
どこか懐かしい、日本の情緒・シティポップと西海岸のインディーロックの雰囲気を兼ね備えた新世代のノスタルジーサウンドが特徴のアルバムです。
サウンドから溢れ出るサーファーの街カリフォルニアの出身の彼ですが、その音楽性はウェッサイだけにとどまらず、自分自身で行う生演奏、ミキシングやマスタリング、PVも監督してしまう最先端のDIYプロジェクトになっています。
“アグレッシヴ・エレヴェイター・ソウル”を自称するそのサウンド感を背負った今作はチルウェイヴ、ベッドルーム・ポップといったゆるさだけでなく、現代的なシンセのコードワークと70〜80’sソウルのエッセンスをふんだんに散りばめて完成させられています。
そして2018年にテキサス州ヒューストン出身の今最注目バンド「クルアンビン」とアメリカ&ヨーロッパ・ツアーを、2019年には名門レーベル「コールマイン・レコーズ」や「デッド・オーシャンズ」からリリース歴のあるドラン・ジョーンズ&ジ・インディケーションズとアメリカツアーを行うなど業界で話題を集めています。
LAで行われた有名ラジオ局の19周年パーティーではアリエル・ピンクらに交じってライヴを披露し、さらに人気を集めました。
楽曲に関しては、まず注目したいのはアルバム1曲目の“Emulous”。
甘いコーラスからスタートして、70年代的アプローチのローファイなコードワーク、展開するにつれて広がっていく空間。すべてが心地よく絶妙なバランスに保たれています。
Ginger Root - Emulous - YouTube
どんなバックグラウンドを持っていても親しみを持ってしまうような魅力のある、彼の持ち味が上手く表れている1曲目だと感じました。
そして優しい曲調から一転、アルバム2曲目の“In My Dreams”に入ります。
この曲はギターリフによるサーフロックの軽快さと、シンセサウンドの広がりのバランスが非常に気持ちの良い曲だと思います。
Ginger Root - In My Dreams - YouTube
彼の歌い方に関しても強く押し出してかすれる部分があるのですが、ここに琴線に触れるロックンロールを強く感じます。この冒頭の2曲だけで彼の才能と守備範囲の広さに心を打たれました。
サウンド全体を見ても、どの年代にも響くノスタルジーと新鮮さが一貫して流れているアルバムです。ミックスも絶妙です。
彼のアルバムは、他にも系統の違う良さが詰まったものがたくさんあるのでまた別の機会で紹介できたらと思います。
■「Spotlight People」トラックリスト
1. Emulous
2. In My Dreams
3. Belleza
4. Lil Window
5. The Classic
6. I Might Just
7. Brooklyn
8. Jam_With_Cam.mp3
9. Thx