今回のレビューはTyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)による2枚目のアルバム「Wolf(ウルフ)」。
今やHIPHOPの新世代を牽引するタイラー・ザ・クリエイターの初期作品であり、荒削りなところもあるが、そこが新鮮で今でも多くのファンに愛されている作品です。
タイラー・ザ・クリエイターは今でも自分やりたいことを突き進むというスタンスですが、今作はとにかく彼のやりたいことをごった煮したような面白さと可能性に溢れています。
HIPHOPにおけるライム、フロウ、リリックといったスキルのバランス感を大切にするアーティストはたくさんいますが、今作のリリックは危険なスラングがばら撒かれていたり、ライミングも不規則に詰め込まれたり、非常にスリリングな彼の世界観を爆発させて作られています。
そしてタイラー自身がグッと前に来るというよりは、フィーチャリングしたラッパーの良さを引き立たせるために、あえて引きのラップを行ったり。リズム感のズレを作ったり、とてもメリハリの多い制作の仕方をしている印象を受けました。
今作は多くのプロデューサーによって高い評価を受けていますが、アメリカでは、USビルボード200において3位デビュー。初めの週だけで89,000枚の売り上げを達成しました。2週目においてはさらに18,000枚を売り上げ、アメリカだけで合計売り上げ107,000枚にまで昇り詰めました。
楽曲に関しては、まずは今作のタイトル曲でありセレモニー的な一曲である1曲目“Wolf”からタイラー・ザ・クリエイターの今に通ずるシンセの洗練されたサウンドが広がります。
Tyler, The Creator - Wolf - YouTube
印象としては、今のタイラーよりもコーラスワークの使い方が大胆で、語りの荒々しさを感じました。
アレンジもバリエーションが豊かでワクワクさせてくれます。
続くアルバム2曲目の“Jamba”。
冒頭から怪しさが漂っています。。笑
Tyler, The Creator - Jamba - YouTube
不穏なシンセベースと重々しいボーカル、危ういサンプリングでタイラーの若々しさが溢れていて、とてもクールな一曲になっていると思います。
彼の今の楽曲に通じるアレンジワークも感じられてとても面白い曲でした。
アルバム全体を通してサウンドの重たさがありながら、曲のブレイクで爽やかなシンセのコードワークが現れたり、不協和音をうまく使ったクセになるリフがあったり、何度も聴きなおしてずっぷりハマっていくスルメアルバムだなと思いました。
彼の最新作についても、こういった過去作と比較しながらレビューしていけたらと思います。
■「Wolf」トラックリスト
1. Wolf
2. Jamba (ft. Hodgy Beats)
3. Cowboy
4. Awkward
5. Domo23
6. Answer
7. Slater (ft. Frank Ocean)
8. 48
9. Colossus
10. PartyIsntOver / Campfire / Bimmer (ft. Lætitia Sadier & Frank Ocean)
11. IFHY (ft. Pharrell)
12. Pigs
13. Parking Lot (ft. Casey Veggies & Mike G)
14. Rusty (ft. Domo Genesis & Earl Sweatshirt)
15. Trashwang (ft. Left Brain, Na'kel, Jasper, Taco, L-Boy, Lucas & Lee Spielman)
16. Treehome95 (ft. Erykah Badu & Coco Owino)
17. Tamale
18. Lone