【特別コラム】彼らは一体、何者なのか?映画『スパークス・ブラザーズ』感想・レビュー

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洋楽コラム

彼らは一体、何者なのか?

4月8日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、渋谷シネクイント他全国公開される映画『スパークス・ブラザーズ』。

エドガー・ライトが監督を務めた、アメリカ合衆国のロック&ポップ・バンド、Sparks(スパークス)初のドキュメンタリー映画です。

今回は試写会にて鑑賞した感想・レビューと共に作品の魅力をご紹介させて頂こうと思います。

INTRODUCTION

【4月8日(金)公開】映画『スパークス・ブラザーズ』予告編

映画『スパークス・ブラザーズ』本編映像<スパークスの衝撃と影響をエドガー・ライト監督他が解説> – YouTube

兄ロンと弟ラッセルのメイル兄弟からなる「スパークス」は、デビュー以来、謎に包まれた唯一無二のバンド。レオス・カラックス監督最新作『アネット』で原案・音楽を務めたことでも話題沸騰中!そんな彼らの半世紀にもわたる活動を、貴重なアーカイブ映像やバンドが影響を与えた豪華アーティストたちのインタビューと共に振り返る。スパークスの魅力を語るのは、グラミー賞アーティストのベックをはじめ、フリー(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)、アレックス・カプラノス(フランツ・フェルディナンド)、トッド・ラングレン、デュラン・デュラン、ニュー・オーダー、ビョーク(声の出演)など80名にのぼる。

音楽界の“異端児”と呼ばれ、時代と共に革命を起こし続ける<スパークス兄弟>は、なぜこれほどまでに愛され続けるのかー。挑戦的かつ独創的な楽曲、遊び心溢れる映像、さらには彼らの等身大の姿までを捉え、その理由を探る。自らもスパークスの大ファンだと公言するエドガー・ライト監督によるカラフルな世界に酔いしれる!今年の音楽映画決定版!

ロック&ポップ・バンド、スパークス

ロック&ポップ・バンド、スパークス
Sparks(スパークス)は、ロサンゼルスのRon(ロン:キーボード)とRussell(ラッセル:ボーカル)のメイル兄弟によって結成されたアメリカのポップとロックのデュオです。

彼らの音楽は、アメリカよりもヨーロッパで成功しており、1972年のデビュー以来、50年にわたって24枚のスタジオ・アルバム、1枚のライヴ・アルバム、1枚のサウンドトラック・アルバム、1枚のコラボレーション・アルバムをリリース。70を過ぎた現在も精力的な活動を続けています。

エドガー・ライト初のドキュメンタリー作品

エドガー・ライト初のドキュメンタリー作品
Edgar Wright(エドガー・ライト)は、イギリスの映画監督、脚本家。監督としては長編デビュー作のゾンビ・コメディ『ショーン・オブ・ザ・デッド (2004)』、『ベイビー・ドライバー (2017)』や『ラストナイト・イン・ソーホー (2021)』などで知られています。

エドガー・ライトが長年大ファンだと公言していたこともあり今作が実現。初のドキュメンタリー作品として2018年より約2年かけて撮影が行われました。

商業的な成果に左右されず自分たちの音楽を貫くスパークス

商業的な成果に左右されず自分たちの音楽を貫くスパークス
スパークスはポップスこそベースにあるものの、あらゆるジャンルを積極的に取り込み、独創性のある歌詞が彼らの持ち味のひとつとなっています。

これが必ずしも大衆に受け入れられるのかと言われれば決してそうではなく、ブレイクから衰退を何度も繰り返してきました。

実際、これまでにリリースした24枚のスタジオ・アルバムのうち、全英アルバムチャートでトップ10入りを果たしたのは『Kimono My House (1974)』、『Propaganda (1974)』、『Hippopotamus (2017)』、『A Steady Drip, Drip, Drip (2017)』の4枚のみ。チャート入りすらしない時代を何度も経験していますが、何よりどん底を味わったのは80年代6年間かけて行った映画製作も企画そのものが立ち消えになってしまったことかもしれません。

以降、90年代に再び音楽に向き合い、彼らの音楽を貫き続けたことで、今では多くのファンを獲得しています。

『スパークス・ブラザーズ』ではベック、フリー(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)、アレックス・カプラノス(フランツ・フェルディナンド)、トッド・ラングレン、デュラン・デュラン、ニュー・オーダー、ビョーク、ジョルジオ・モロダー、マイク・マイヤーズら、錚々たるアーティストたちが出演。彼らの凄さを作品の中で語っています。

『スパークス・ブラザーズ』感想・レビュー

『スパークス・ブラザーズ』感想・レビュー
幼少期からデビューまでを本人たちのコメントを軸に振り返りながら、過去の名曲を体感できる今作。

このドン底寸前から何度も這い上がり、何度も再ブレイクを果たす異色のバンドであるという経歴が、このドキュメンタリーにより深みを与えているため、141分という時間もあっという間に感じます。

そしてそれぞれの出来事に本人たちが細かなコメントを残しているため、より深くスパークスの経歴を楽しむことができる作品です。

スパークス最大の強みとは?

作品を鑑賞して真っ先に感じるのが「アーティストであり続けることの強み」。

一度成功するとどうしても商業的なことを考え、ヒット作から大きな方向転換する決断はなかなかできないものだと思います。実際そこにはわずかでも自身が作りたいものでありながら「ファンが求めるもの」を追求するのが一般的だと考えられるからです。もちろん彼らがファンを度外視しているという意味ではありませんが、そういった意味では根本的にアーティストでありながら創作者(クリエイター)気質の高い兄弟だと言えるでしょう。

そこにはアートに囲まれて育ったという生い立ちも影響しているかもしれません。「顧客が求めるもの」ではなく「自ら生み出すことを追求するもの」に価値を見出して顧客がつくという考え方に非常に近く、常に高いクオリティで挑戦し続けている結果、大衆に響く時と響かない時がある、そんな印象を受けます。

しかしこのスタイルを貫くには相当な覚悟が必要です。彼らは70年代、80年代、90年代、そして2000年代、活動期間のすべてで順調だった時期とどん底に近い時期を繰り返し経験してきています。その間何度もレーベルを変え、それでも自らの音楽を貫いてきたわけです。

結果としてここ数年、ようやく安定した人気を確立しつつあります。それが「アーティストであり続けることの強み」であることを証明しているように感じます。

『スパークス・ブラザーズ』はこんな方におすすめ

『スパークス・ブラザーズ』はこんな方におすすめ
長い人生を書けてまだまだ現役である彼らから学ぶべきは「やりたいことにこだわり続ける信念」。

この作品から兄弟がどんな人生を歩んできたのかを深く理解することで、曲の楽しみ方も変わりますし、初めて彼らを知った方にとっても「生き方」に学ぶべき要素が多く、初めて聴く曲、始めてみるミュージック・ビデオがアート作品のような印象を受け一気に引き付けられます。

特に昨今、「個人の時代」と言われるようになってきており、人生において「やりたいことだけをやりたい」と考えている方も増えているように感じます。そんな方には是非、「やりたいことにこだわり続ける信念」をこの作品と通じて学んでいただきたい、そう感じる映画です。

また素直にスパークスというデュオの不可思議な音楽人生を楽しむという意味でも、よく見るアーティストのドキュメンタリーとは一味も二味も違う魅力にあふれた作品なので、この類のドキュメンタリー作品が好きな方にももちろん見て頂きたい映画です。

『スパークス・ブラザーズ』作品情報

『スパークス・ブラザーズ』作品情報
■タイトル:スパークス・ブラザーズ
■公開表記:4月8日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、渋谷シネクイント他全国公開
出演:スパークス(ロン・メイル、ラッセル・メイル)、ベック、アレックス・カプラノス、トッド・ラングレン、フリー、ビョーク(声)、エドガー・ライトほか
監督:エドガー・ライト
制作:ニラ・パーク エドガーライト ジョージ・ヘンケン ローラ・リチャードソン
編集:ポール・トレワーサ
アーカイブ・プロデューサー:ケイト・グリフィス
撮影監督:ジェイク・ポロンスキー
ミュージック・スーパバイザー:ゲイリー・ウェルチ
ライン・プロデューサー:セリーナ・ケネディ

2021年/イギリス・アメリカ/カラー/ビスタ/英語/原題:The Sparks Brothers/141分/字幕翻訳:石田泰子/字幕監修:岸野雄一/映倫区分G

■配給:パルコ ユニバーサル映画
■コピーライト:© 2021 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED

WRITER

酒井裕紀

洋楽まっぷ管理者。米・英の音楽チャートなどのデータを好み、70年代から最新の洋楽までヒット曲なら幅広い知識を持つ。時代毎の良さがある洋楽の魅力を少しでもわかりやすくご紹介できればと思います。

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