TikTokスターから全英チャート首位!アレックス・ウォーレンの現在地

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洋楽コラム

最新の全英シングルチャートで最新曲「Ordinary」が7週連続首位と今年最多記録を更新中のシンガー、アレックス・ウォーレン。

米ビルボードホット100でもトップ3入りを果たし、グローバル200チャートでも2位まで上昇。

アレックス・ウォーレンの物語は、現代のデジタル時代における自己表現と再生の象徴であり、彼の音楽は多くの人々に共感と希望を与えています。

不遇を超えて生まれたアーティスト

2000年9月18日、カリフォルニア州カールスバッドで生まれたアレックス・ウォーレン(本名:アレクサンダー・ウォーレン・ヒューズ)は、幼少期から困難な環境に直面してきました。

9歳のときに父親を腎臓がんで亡くし、母親のアルコール依存症や家庭内の問題により、18歳で家を追い出されるという経験をしました。その後、友人の車で寝泊まりしながら、YouTubeやTikTokでコンテンツを制作し、徐々に注目を集めていきました。母親は2021年に亡くなっています。

2019年には、TikTokの共同クリエイターグループ「Hype House」の共同設立者として活動を開始し、SNS上での影響力を拡大しました。しかし、次第に自身のオンライン上のキャラクターに違和感を覚え、より本質的な自己表現を求めて音楽の道へ進む決意を固めました。

Hype Houseとは

Hype House(ハイプ・ハウス)は2019年にロサンゼルスで設立されたTikTok発の共同クリエイターハウスで、若手のSNSインフルエンサーたちが同じ屋根の下で暮らし、互いに動画を制作・拡散することで人気を高める仕組みです。アレックス・ウォーレンは設立当初からのメンバーで、共同創設者としてその名を連ねていました。

一方で、ハイプ・ハウスにはコンテンツの量産や注目至上主義、さらにメンバー間の対立といった課題も多く、アレックス自身もその内部文化や期待されるキャラクターに疑問を抱くようになっていきました。彼は次第にその活動から距離を置き、音楽という別の表現手段に軸足を移していくことになります。

2022年にはメンバーの生活を追ったドキュメンタリー『ハイプハウス~TikTokスターのリアルライフ~』がNetflixで配信され話題を呼びました。

Hype House | Official Trailer | Netflix - YouTube

メジャーデビューの選択

音楽活動の初期には、独立して楽曲をリリースし、2022年にはアトランティック・レコードと契約を結びました。

アレックスはハイプ・ハウスでの活動によって、すでにZ世代を中心としたSNSユーザーの間で広く知られる存在となっており、TikTokやYouTubeで数百万人のフォロワーを獲得していました。そのため、音楽活動を本格化させた時点で一定のファンダムが形成されており、メジャー・レーベルからの契約オファーが届いたのも、彼の知名度と発信力が大きく影響していたと言えます。一方、日本ではTikTok発のインフルエンサー文化やハイプ・ハウス自体の知名度がまだ低いため、彼の存在や経緯に対する認識は世代間でかなりの差があるといえます。

契約後にリリースされた「Carry You Home」は、エモーショナルなピアノ・バラードで、大切な人を失った喪失感や守りたい気持ちを率直に歌った作品です。リリース当初は一定の注目に留まっていたものの、「Ordinary」の世界的な成功を機に再評価され、現在では彼の代表曲のひとつとしてストリーミング再生数が急上昇しています。特にTikTokやSpotifyの公式プレイリストに再び取り上げられたことで、2025年春時点では「Ordinary」に次ぐヒット曲となっています。

Alex Warren - Carry You Home - YouTube

同年発表のデビュー・アルバム『You'll Be Alright, Kid (Chapter 1)』に収録されたシングル「Burning Down」はビルボードホット100で69位を記録。「Burning Down」は、メロディアスでエモーショナルなバラードながら、その歌詞にはハイプ・ハウス時代の過去や不信感、孤独、怒りが込められていると多くのメディアが報じました。とくに「I burned the house to feel the warmth」というラインは、ハイプ・ハウスという名を暗示しながら、自己の再生と解放を象徴する言葉として話題になりました。

報道によっては「ハイプ・ハウスを公然と批判した初の楽曲」として捉えられることもあり、TikTok文化と距離を置こうとするアレックスの決意表明として評価される一方で、その表現の激しさを疑問視する声もありました。

Alex Warren - Burning Down - YouTube

「Ordinary」の誕生から成功まで

2025年2月にリリースされたシングル「Ordinary」は、彼の音楽キャリアにおいて大きな転機となりました。

この曲はTikTok上で瞬く間にバイラルとなり、数百万回の使用・再生を記録。その後、Netflixの人気リアリティ番組『ラブ・イズ・ブラインド ~外見なんて関係ない?!』での初パフォーマンスが世界的な注目を集め、一気にストリーミング再生回数が跳ね上がりました。

『ラブ・イズ・ブラインド ~外見なんて関係ない?!』は、外見を一切知らずに会話のみで相手と婚約するという形式の恋愛リアリティ番組で、感情や本質を重視した構成が世界中で支持を集めています。番組内で披露された「Ordinary」のパフォーマンスは、視聴者の感動を呼び、SNSや音楽チャートでの急伸のきっかけとなりました。

この楽曲は、イギリスのオフィシャルシングルチャートで7週連続1位を獲得。ビルボードホット100でも最高3位を記録し、国際的な成功を収めました。

「Ordinary」は、彼の妻であるクーヴル・アノンとの関係をテーマにしたラブソングであり、彼女との出会いや結婚生活が楽曲のインスピレーションとなっています。2人は2018年にスナップチャットを通じて知り合い、困難な時期を共に乗り越えてきました。2024年6月に結婚し、その愛の物語は多くのファンに感動を与えています。

Alex Warren - Ordinary (Live From Love Is Blind) - YouTube

アレックス・ウォーレンの現在地

現在、アレックス・ウォーレンは『Cheaper Than Therapy Global Tour』を開催中であり、アメリカやカナダを中心に公演を行っています。彼の音楽は、個人的な経験や感情を率直に表現しており、多くの人々にとって共感と癒しを提供しています。

アレックス・ウォーレンの歩みは、困難な状況から立ち上がり、自己表現を通じて新たな道を切り開く力を示しています。その過程は劇的で、SNSで名を轟かせながらもオンラインのペルソナリティから脱却し、自分の真実を売り出す音楽を繰り広げることで、真に欲しかった作家像を体現しています。

また、個人的な疲れや想いを精緻に書き込んだ歌詞や、断片的な動画編集のミュージック・ビデオなども見手としての魅力を高めています。

「Ordinary」の大ヒットを経て、音楽活動の標準を変えつつある彼の存在は、現代のミュージック・シーンに新しい逆風をもたらしており、TikTokスターから音楽で最も成功したアーティストの一人になりました。

自身のインスタグラムでは過去を振り返り、「12歳の頃、なぜこんなにたくさんの悪いことが自分に起こるのか、本当に分からなかった。ここ数週間、自分が経験したことを歌にして歌ってきたことで、きっとこうして皆さんとこの瞬間を分かち合えるようになるために、私はああいう経験をするべきだったんだと改めて実感した。現れてくれて、そして私の人生を変えてくれて、本当にありがとう。」と投稿しており、今の成功を深く噛み締めている様子。海外メディアのインタビューでも過去の辛い経験を音楽に反映できたことに感謝していると語っています。

日本においてはまだ知名度が高くない方ですが、彼の音楽は訳されればわかる感情を体現しており、訳としても広めていける価値のあるアーティストです。今後は日本のミュージック・シーンでも注目を集めていくであろうアレックス・ウォーレンの動向に気を配りたいところです。

■楽曲リンク

You'll Be Alright, Kid (Chapter 1) / Alex Warren

・Alex Warren
→『You'll Be Alright, Kid (Chapter 1)

■楽曲リンク

Ordinary / Alex Warren

・Alex Warren
→「Ordinary

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洋楽まっぷ編集部

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