BPIが2022年のイギリスの音楽輸出が20%急増して9億ドルを超えたことを発表

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洋楽コラム

英国レコード産業協会(BPI)が英国のレコード音楽輸出は2022年に大幅な伸びを記録し、世界的な競争激化にも関わらず過去の記録を上回った事を発表しました。

BPIが発表した数字によると、英国アーティストのストリーミングサービスでの成功により音楽販売と海外ストリーミングの額は昨年より20%増加し、7億900万ポンド(9億150万ドル)を達成。7億ポンド超えは初めてのことで、1年で1億ポンド以上増加。BPIがレーベルの海外収入に関する年次調査を開始した2000年以来最も高い記録となっています。

英国出身のアーティスト、バンド、グループによる世界での成功が大きな影響を与えており、特にHarry Styles(ハリー・スタイルズ)は「As It Was」が世界的な成功を収め、Glass Animals(グラス・アニマルズ)「Heat Waves」もロングヒット。エンターテインメント業界のデータを発信するLuminateによるとこの2曲が
昨年世界で最もストリーミングされた曲の1位、2位に君臨しています。

YouTubeHarry Styles - As It Was - YouTube

YouTubeGlass Animals - Heat Waves - YouTube

これは昨年の全米ビルボードホット100の年間チャートを見ても容易に想像がつく通り、「Heat Waves」が1位、「As It Was」が2位、他にもAdele(アデル)「Eyes on Me」が4位、Ed Sheeran(エド・シーラン)「Shivers」が5位とトップ5のうち4曲が英国出身のアーティストによる楽曲であるという異例の結果となっていました。米国での英国の音楽消費は昨年比28%増となっており、他の地域も含め一番の増加率となっています。

日本においても昨年比+5.2%増となっており、同様に世界的ヒットとなった曲のセールスやストリーミングが進んだと見られます。

BPIは2021年に、英国の音楽輸出は2030年までに年間10億ポンド以上に達する見込みであるとあきらかにしており、積極的に世界配信を行い、わずか数年でその推移に到達しそうな勢いを見せています。米国のような主要なレパートリー市場だけでなく、英国は現在、ラテンアメリカやアーティストが政府から多額の支援を受けている韓国などの国々を含む急成長している市場が競争相手となりそうです。

BPI最高戦略責任者兼暫定最高経営責任者ソフィー・ジョーンズは「英国のレーベルによるこれらの記録的な輸出額は、世界の音楽舞台における、歴史ある音楽市場と急速に拡大する新しい音楽市場の両方による前例のない競争に直面した中で、並外れた成果を表しています。これらの政策により、2020年末までに年間英国音楽輸出額10億ポンドという目標を達成する軌道に乗ることができましたが、この成長が続くためには英国が音楽への投資を支援する環境を維持する必要があり、政策立案者は引き続きその努力を続ける必要があります。英国音楽の海外での可能性を最大限に高めるために業界と協力していきます。」と述べています。

ここまでは昨年の結果によるものですが、2023年上半期時点の流れを見る限り、あきらかに昨年のような勢いは見せていません。米国だけに目を向けるとMorgan Wallen(モーガン・ウォーレン)の快進撃に加えてMiley Cyrus(マイリー・サイラス)も久しぶりとなる世界的ヒットを放ち、SZA(シザ)もリード曲で初めて成功を収めています。その他ではPeso Pluma(ペソ・プルマ)の成功によるメキシコ発の音楽や、韓国のアーティストは次々とビルボードチャートにランクインするようになり、ビルボードが発信するグローバル200はかつてないほど多国籍な状態。日本からもYOASOBIが初めてトップ10入りを果たしています。

英国からはエド・シーランが新作をリリースしたものの、前作ほどの商業的結果は得られていません。下半期、英国出身のアーティストがどのような動きを見せるのかにも注目です。

参考情報:As Harry Styles and Glass Animals Top the Charts, British Music Exports Soar 20% to $900 Million

WRITER

酒井裕紀

洋楽まっぷ管理者。米・英の音楽チャートなどのデータを好み、70年代から最新の洋楽までヒット曲なら幅広い知識を持つ。時代毎の良さがある洋楽の魅力を少しでもわかりやすくご紹介できればと思います。