【洋楽】本当にブリットポップは死んだのか?ロックシーンの歴史と共に考える【UKロック】

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洋楽コラム

【洋楽】本当にブリットポップは死んだのか?ロックシーンの歴史と共に考える【UKロック】
IMAGE VIA:Wallpaper Cave

1990年代、イギリスはロック音楽の隆盛を迎えていました。
ブラーやオアシスが台頭してポップかつ尖ったサウンドが世界全体でブームを起こしたのです。

彼らが奏でるロックサウンドは「ブリットポップ」と呼ばれ、多くのリスナーを虜にしました。

しかしブームはいずれ去るもの。
1997年、ブラーが5thアルバムをリリースした際にボーカルのデーモン・アルバーンは「ブリットポップは終わった」とも取れる発言をしたのです。

それから20以上経ったいま、本当にブリットポップは衰退したのか。

本コラムでブリットポップの歴史を振り返ると共に私の想いを書き綴ります。

ブリットポップが死ぬまでの歴史を振り返る。誕生のきっかけはUSロックへの対抗

1990年代前半、ロック音楽はグランジ・ロックが全盛期を迎えていました。
ニルヴァーナを筆頭としたヘヴィーで忌々しさを感じるような曲が若者の間で流行したのです。

Nirvana – Smells Like Teen Spirit

Nirvana – Smells Like Teen Spirit – YouTube

ニルヴァーナはアメリカのバンドですが、彼らの影響力は絶大でした。
瞬く間に全世界でヒットを飛ばしカリスマとなったのです。そしてつられるようにグランジがブームとなり、USロックがチャートを賑わせます。

そんな状況を快く思わなかったのが、イギリスの音楽関係者たちです。

ビートルズに代表されるように、60年代からロックの覇権を握っていたのは確実にイギリスでした。
当然「ロックと言えばイギリスだ」という考えを持つ人間は多くいます。

当時、USロックが世界を席巻する中でイギリスのロック好きは“イギリスらしさ”を持ったロックの復活を待ち望んでいたのです。

そんな中1994年、ニルヴァーナのボーカルだったカート・コバーンが自殺してしまいます。
グランジを引っ張る存在だった彼がいなくなったことで、ブームは一気に終焉を迎えたのです。

グランジブームの終わりとブリットポップの誕生

グランジブームが終焉したことで、ロックの流行りに穴が開きました。
そこを埋める存在として注目されたのがイギリスの若手ロックバンド『Blur(ブラー)』と『Oasis(オアシス)』だったのです。

彼らの曲は単に聞きやすいだけでなく、どこかイギリスらしい品を感じさせるものでした。(彼らの素行には目を瞑るとして)

まさに待ち望んでいたイギリスらしさを持ったロックバンドそのものです。

メディアはこのイギリスらしくポップで馴染みやすいロックを「ブリットポップ」と名付け、一気に浸透させました。

Blur – Parklife

Blur – Parklife – YouTube

Oasis – Live Forever

Oasis – Live Forever – YouTube

また彼らはサウンド・出身階級などが対照的でライバル関係にしやすく、メディアも煽りやすかったという一面もブームに大きく影響しました。

・中流階級出身で知的かつシニカルなブラー
・労働階級出身で荒さを感じつつも繊細で美しいメロディーを奏でるオアシス

まさに似て非なる存在だった2組は、瞬く間にロックシーンを駆け上がりイギリスを代表するバンドとなったのです。

多くのレコード会社は、彼らを模倣したようなバンドを次々とデビューさせます。

ブリットポップ全盛期へ

90年代中盤に差し掛かると、イギリスのロックシーンから排出された個性的なアーティストが次々と人気を博していきます。

パルプ、レディオヘッド、ザ・ヴァーヴ、スウェード、ノーザン・アップロアー、スーパーグラス…etc

Radiohead – Creep

Radiohead – Creep – YouTube

Suede – So Young

Suede – So Young – YouTube

当時、ロックシーンはイギリスが牛耳っていたといっても過言ではないでしょう。

また、イギリスのバラエティー番組にロックバンドが出演したり、映画の劇中歌に使われるなどしたこともブリットポップブームを推進した理由の一つです。

1995年には、ライバルとして扱われていたオアシスとブラーがシングルを同日に発売するという事件も起きます。

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1996年に入っても、ブリットポップブームが終わる気配はしません。

ブルートーンズに代表される実力派新人バンドの台頭もありました。

The Bluetones – Slight Return

The Bluetones – Slight Return – YouTube

さらには、オアシスが『ワンダーウォール』をアメリカでもヒットさせるなどすることでイギリスロックの最盛をまざまざと見せつけたのです。

ブリットポップはロックの中心であり絶対的な存在だったといえます。

90年代前半はヘヴィなグランジがブームだったのに、中盤になると繊細でキレイなギターポップが流行の中心となっていたと考えると、音楽シーンに流れる時間がどれだけ早いか思いしらされます。

衰退期を迎え、ブリットポップブームは終わりへ

1997年ごろになると、ブリットポップブームに乗っかった新人バンドが数多くデビューしました。

その中には明らかに実力不足と評されるバンドも多く存在し、世間も徐々にブームに飽き始めてしまいます。

国は変わりますが、日本でも2000年代前半にパンクロックブームが訪れ、多くの実力不足バンドがデビューしてしまいました。
既にイギリスでは90年代後半同じ現象が起きていたというワケです。

そして1997年、ブラーはアルバム『ブラー』をリリース。
ボーカルのデーモンはリリース時のインタビューで「ブリットポップは終わった」とも取れる発言をしたと言われています。

それもそのはず。この作品にデビュー時のようなイギリスらしさはありませんでした。
言うなればアメリカ志向が顕著に出たオルタナティブロックアルバムだったのです。

オアシスも同年3rdアルバム『ビィ・ヒア・ナウ』をリリースしますが、この作品も初期のようなブリットポップ感はゼロに等しいものでした。

そう、ブリットポップブームを作り上げた張本人たちが自ら終止符を打ったのです。
まるで「次のステージに行こう」と言っているかのように。

「ブリットポップは死んだ」は嘘?期待の若手バンドを紹介

衰退を見せたブリットポップですが、本当に死んだのでしょうか。
私は死んだとは一切思いません。

オアシスのようなブリットポップを象徴する存在はいないかもしれませんが、彼らに影響を受けたフォロワーは確実にいます。

私が紹介できる範囲で、ブリットポップの血筋を感じるアーティストを二組紹介します。

FUR

・If You Know That I’m Lonely

FUR – If You Know That I’m Lonely – YouTube

まさにUKらしさ全開なオールドロックを奏でてくれる若手バンドです。
きっと多くの人の琴線に響くでしょう。

The Lounge Society

・Burn The Heather

The Lounge Society – Burn The Heather – YouTube

トリッキーで掴みどころがない曲なのに、なぜか耳から離れない。
この雰囲気は往年のブラーを彷彿とさせます。

現代風なサウンドも相まって、新時代のUKロックを感じさせてくれるバンドです。

まとめ

ブリットポップの栄枯盛衰をまとめてきました。

ブラーのデーモンが「ブリットポップは死んだ」と口にしたというエピソードは有名です。

しかし実際は、明確に「死んだ」とはコメントしておらず、あくまで海外でのインタビューに対して日本語で訳した際にわかりやすく「死んだ」と表現した可能性もありそうです。

もし言ったのであればそれはデーモンではなく、他のミュージシャンかもしれません。

真相はわかりませんが、この時期衰退していったという点においてはあまり変わらない部分もあるかもしれませんね。

ただ音楽の多様性が広まった昨今、なにが流行っているのかなんて人によって全く違います。

つまりブリットポップだってまだ死んでいないのです。

これからどんなUKロックが台頭してくるのか…。

新しいロックシーンがますます楽しみです。

WRITER

広田昂大

UKロックが大好きな20代のライターです! 洋楽のニュースからコラムまで、様々な情報をわかりやすく伝えていけたら良いなと思っています!

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