美しいハイトーンボイスと独特の世界観で私達を魅了するThe Weeknd(ザ・ウィークエンド)。しかし、その歌声とはウラハラに彼の幼少期は厳しくツライものでした。
父親不在の家庭で生まれ育つ
1990年、カナダのトロントで生まれたザ・ウィークエンド(本名:エイベル)。彼の両親はアフリカのエチオピアからの移民でした。80年代に、政治的混乱と飢餓から逃れてアメリカに移住したのです。結婚していなかったふたりは、まだエイベルが幼いときに破局。その後、彼は母親と祖母と一緒に暮らすことになりました。
移民のシングルマザーの暮らしは、もちろん楽ではありません。彼の母は仕事を複数かけもちしながら、なんとか一家を支えました。もちろん働き詰めなので、息子と過ごす時間はあまりなく、エイベルはそのせいで寂しい思いをします。「いつも兄貴が欲しいと思っていた」んだとか。そんな彼の孤独を癒やしてくれたのが、映画や音楽への興味でした。
しかし彼が育ったのは、トロント東部のスカーバロー地区。まわりは同郷の東アフリカや、中東、インドやカリブ海周辺からの移民ばかりで、混沌とした場所でした。そんな環境の中で、エイベルは11歳で大麻を吸い始め、それをきっかけに様々な薬物に手を染めていきます。また警察と揉め、数日間刑務所で過ごしたこともあったんだとか。
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「薬物」と「セックス」がインスピレーションに?
17歳のとき、通っていた高校を中退して実家を離れ、友人と一緒に暮らし始めたエイベル。大麻を売って生計を立てながら、3人でワンルームをシェアしていたものの、家賃が払えなくなり追い出されてしまいます。最終的には、複数の女性の家を転々としながらなんとか生き延びていたんだとか。「当時は少なくとも3人の女の子がオレのことを彼氏だと思っていたはず…」という状況だったそうです。
そんな自堕落な生活を送っていた彼ですが、曲をつくりだしたのは、ちょうどそのころ。彼の初期の作品には、「薬物」と「セックス」からインスピレーションを受けたものがたくさんあるのも納得です。例えば、2011年にリリースしたミックステープ「House Of Balloons (ハウス・オブ・バルーンズ)」に収録された「The Party & The After Party(ザ・パーティ・アンド・アフター・パーティ)」にはこんな歌詞が。
I got a brand new girl
Call her Rudolph
She'll probably O.D. before I show her to momma新しい彼女ができたんだ
ルドルフ(※1)ってよんでるんだよ
たぶんこの子、ママに紹介するまえにオーバードーズ(※2)しちゃうだろうな
(※1)ルドルフとは「赤鼻のトナカイ」のこと。コカインを摂取して鼻が赤くなっていることを暗喩している。
(※2)薬物の過剰摂取のこと
The Weeknd - The Party & The After Party - YouTube
「ザ・パーティ・アンド・アフター・パーティ」の音源
歌詞をみると、彼がいかに薬物に溺れた交友関係をもっていたかがわかります。2013年にリリースされた「Kiss Land(キス・ランド)」の歌詞には、ご丁寧にどんなものを摂取してハイになっていたかの、詳細な説明まであるのです。
God damn I'm high, my doctor told me to stop
And he gave me something to pop
And I mix it up with some Adderall's and I wait to get to the top
And I mix it up with some alcohol and I pour it up in a shotヤバい すごいハイだよ 医者にやめろっていわれたんだ
やめるための飲み薬をもらってさ
それをアデロール(※3)とまぜて飲んで ハイになるのをまつのさ
そして酒ともまぜてさ ショットで飲み干すんだ
(※3)ADHD(注意欠如・多動性障害)の治療薬。刺激や興奮を感じやすくなるといわれる
The Weeknd - Kiss Land - YouTube
「キス・ランド」の音源
そんな暗黒時代をへて、いまや世界を代表するアーティストになったエイベル。「17歳で家を出たときには、ママに『子育てに失敗したわ』という顔をされた」と語った彼ですが、今では母親もビックリの「親孝行息子」になったといえるのではないでしょうか。
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