【洋楽】名盤と呼ばれる歴史的アルバムの海外の評価は?メディア毎にレビューを比較PART2

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洋楽コラム

名盤と呼ばれる歴史的アルバムはたくさんありますが、海外メディアがこぞって評価してるかと言われると決してそうではなく、メディアごとの評価には特徴があります。

前回好評につき、第2弾として今回も過去の名盤に対してどのような評価をしているのか、代表的な作品をピックアップしてご紹介いたします。

【洋楽】名盤と呼ばれる歴史的アルバムの海外の評価は?メディア毎に比較PART2

Nirvana – Nevermind

Nirvana - Nevermind
出典:Amazon

Nirvana(ニルヴァーナ)は伝説的な名盤としても知られる『Nevermind』1枚で90年代の音楽業界を大きく変化させたと言えます。今作は全世界で3000万枚以上を売り上げており、特X世代と呼ばれる1965~1980年生まれの当時の若者に刺さりまくった作品です。

ただおもしろいことに、『The 500 Greatest Albums of All Time』で上位10作品に挙げるほど評価しているローリング・ストーン誌の評価は5つ星のうち3つ星。レビュアーは音楽評論家のIra Robbins(アイラ・ロビンス)。作品のエネルギーや精神を持ち合わせていることについては認めるも、その発言のみに留まっている点では当時の業界の変わり目を冷静に捉えていたのかもしれません。

これだけ名盤として知られていはいるものの、意外にもローリング・ストーン誌のように満点評価をしていないメディアがほとんど。そんな中で満点評価をしているのがシカゴ・トリビューン誌。予想外のメロディックなフック、テンポの突然の変化、どこからともなく刺激的なコーラスでリスナーの耳を吹き飛ばす才能があるという点、そしてカート・コバーンの声の新たな表現範囲などを評価しています。

Nirvana – Smells Like Teen Spirit – YouTube

Nirvana – Lithium – YouTube

Alanis Morissette – Jagged Little Pill

Alanis Morissette - Jagged Little Pill
出典:Amazon

Alanis Morissette(アラニス・モリセット)はデビュー当初より出身地であるカナダではチャート入りを果たすなど一定の人気がありましたが、当時はダンス・ポップ路線でした。世界デビューするにあたりオルタナティヴ・ロックに転向し、リードシングル「You Oughta Know」がラジオでプッシュされたこともありヒットにつながります。

最終的に今作はオルタナティヴ・ロックジャンルにおいて最も売れたアルバムとなり、世界中で3,300万枚を売り上げました。

海外の評価として注目に値するのは「You Oughta Know」などにおける歌詞。ロサンゼルス・タイムズは4つ星中3つ星半とほぼ満点に近い評価で、アラニス・モリセットほど「驚くほど」「極度の感情的なゲーム」を探求したアーティストはほとんどいないとしました。同じく4つ星中3つ星半をつけているフィラデルフィア・インクワイアラー誌では、音楽評論家のTom Moon(トム・ムーン)が「年齢を超えて賢く、あらゆる場面で遭遇する偽善を暴露することを決意している」としました。

4つ星中3つ星をつけたUSAトゥデイも歌詞について触れ、「成熟した、確かなソングクラフトと鋭い文章を強いる」としています。

ただ「You Oughta Know」の印象が強すぎるがあまり、エンターテインメント・ウィークリー誌など「飲み込むのがはるかに難しい」とアルバムとしてのバランスを考えた評価をするケースもありました。(評価はC+)

Nirvana – Smells Like Teen Spirit – YouTube

Alanis Morissette – Ironic – YouTube

Tame Impala – Currents

Tame Impala - Currents
出典:Amazon

Tame Impala(テーム・インパラ)の代表作と言える1枚。元々評論家からの評価は高いバンドですが、サウンドの変化に加えて世界的にリリースしたことが大きな商業的な成功を持たらしました。

イギリスのガーディアン誌は5つ星の満点評価を与えており、評論家のAlexis Petridis(アレクシス・ペトリディス)は「このアルバムの力強さと奇妙さの多くは、アレンジの甘美さとメロディーの愛らしさに反する切り口から来ている」としました。

その他ではアトランタの音楽誌、ペーストやピッチフォーク、SPIN誌は10段階で9以上の高評価。一方でインデペンデント誌は5つ星中3つ星と高くはなく、評論家のAndy Gill(アンディ・ギル)は「フェージングの多用はテイム・インパラのサイケデリックなルーツへのリンクを提供しますが、ギターのウィッグアウトの欠如は一部のファンを失望させるかもしれない」としました。これはスタイルの変化がかなり影響しているので、全2作の方が好きな人はおそらくいるかと思います。その方たちにとってはあきらかにギター不足かもしれませんね。

Tame Impala – The Less I Know the Better – YouTube

Tame Impala – Let It Happen – YouTube

Rage Against the Machine – Rage Against the Machine

Rage Against the Machine - Rage Against the Machine
出典:Amazon

Rage Against the Machine(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)のデビュー作。

チャートアクションとしてはどこかで1位をとったとかもないんですが、アメリカではトリプルプラチナ認定(300万枚に相当)を受けており、過激すぎる政治的メッセージや当時の米国大統領選挙当日にリリースするなどインパクト十分な1枚。多くの出版社が1990年代のベスト・アルバムのひとつと見なしています。

中でもイギリスの月刊誌レコード・コレクターでは評論家のJoel McIver(ジョエル・マクアイヴァー)が満点評価をつけており、スラッシュ・メタルがグランジに世間の流行が移行していったことがオルタナティヴ・メタルを生み、ラップ・メタルを生み、ニューメタルを生んだと評しています。

他にも5つ星のうち4つ星半、もしくは4つ星をつけた批評家がほとんどでしたが、ヴィレッジ・ヴォイス誌でのRobert Christgau(ロバート・クリストガウ)のレビューは「ラップ愛好家とオペラ嫌いのためのメタル」と要約しています。

全体の評価を見る限りは間違いなく時代を作った名盤のひとつと言えます。

Rage Against The Machine – Killing In the Name – YouTube

Rage Against The Machine – Bullet In the Head – YouTube

まとめ

今回取り上げた4枚は洋楽の中でも特にロック・アルバム好きなら誰もが知る名盤で過去にも取り上げた作品ではありますが、必ずしも全ての評論家が満点評価を出してるわけではないというのがわかります。

今回もやっぱりロバート・クリストガウは辛口な印象。ただロック・アルバムの場合は総じて高い評価を得るというよりも少なくとも「なぜこのアルバムがヒットしたのか?」と疑問に思う人も一定数はいるようです。

もちろん好みの問題もあると思うので、総評ではない限りパーフェクトな評価を得ているわけではないということですね。

次回はまた違うジャンルを中心に調査してみたいと思います。

■参考記事
Nevermind
Jagged Little Pill
Currents (Tame Impala album)
Rage Against the Machine (album)

第1弾はこちら
【洋楽】名盤と呼ばれる歴史的アルバムの海外の評価は?メディア毎にレビューを比較

ロックのおすすめ名盤シリーズ
【洋楽】絶対に聞くべき歴史的ロックアルバムの名盤4選Part2
【洋楽】絶対に聞くべき歴史的ロックアルバムの名盤3選Part3
【洋楽】絶対に聞くべき歴史的ロックアルバムの名盤4選Part4

WRITER

酒井裕紀

洋楽まっぷ管理者。米・英の音楽チャートなどのデータを好み、70年代から最新の洋楽までヒット曲なら幅広い知識を持つ。時代毎の良さがある洋楽の魅力を少しでもわかりやすくご紹介できればと思います。

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