ビートルズ、ドレイク、テイラー・スウィフトの歴史的快挙から見る全米ビルボードホット100の同時チャート入りの歴史

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洋楽コラム

ビートルズ、ドレイク、テイラー・スウィフトの歴史的快挙から見る全米ビルボードホット100の同時チャート入りの歴史
IMAGE VIA:April 4, 1964: The Beatles Make Hot 100 History
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10月21日にリリースとなったニュー・アルバム『Midnights(ミッドナイツ)』で世界中を熱狂させているTaylor Swift(テイラー・スウィフト)が全米ビルボードホット100でトップ10を独占するという歴史的偉業を成し遂げました。

ストリーミング主流の現代においてホット100の集計方法はストリーミング回数の多い楽曲が上位にランクインしやすい傾向にあり、アルバムをリリースすることでホット100では初登場で複数曲がトップ10入りするケースは少なくありません。

今回は全米ビルボードホット100の同時チャート入りの歴史を掘り下げてみたいと思います。

全米ビルボードホット100の同時チャート入りの歴史

ホット100は昔から純粋なCD、レコード、カセットなどの売上だけをベースとした指標ではなく、ラジオのオンエア回数が大きな影響を与えているため、日本でのオリコンチャートのようにセールスのみを集計したランキングとは異なる歴史を持ちます。

それでも複数曲が同時にランクインするというのは非常に稀で、1964年4月4日付でThe Beatles(ザ・ビートルズ)が1位から5位を独占しトップ10に5曲がランクインしたという歴史的記録はDrake(ドレイク)が2018年7月14日付で7曲をトップ10入りさせるまでの54年間、トップ5独占記録は同じくドレイクが2021年9月18日に更新するまで57年間保持されていました。

ビートルズが1位から5位を独占

過去にはElvis Presley(エルヴィス・プレスリー)が1位2位を独占するなどの記録もありましたが、ビートルズがトップ5を独占したのは当時史上初の快挙でした。この記録は今のようなアルバムリリースなどの勢いがあるわけではなく、1964年のビートルズはチャートアクションでも神ががっていました。

1月25日付で初登場3位にランクインした「I Want To Hold Your Hand」。その翌週に1位を獲得し、1位をキープした状態でその翌週「She Loves You」が7位に初登場。3週目には2位に上昇し1位2位を独占しました。

2月29日付では2週連続で1位2位を独占した状態で6位に「Please Please Me」が初登場。3週目の3月14日付で3位に上昇しトップ3位を独占しました。

その翌週、「She Loves You」が「I Want To Hold Your Hand」と入れ替わる形で1位となり、同じ週に「Twist And Shout」が7位に初登場。3月28日付で3位に上昇し上位4曲を独占していました。そして同じ週、「Can’t Buy Me Love」が27位に初登場でランクインしており、翌週1位にジャンプアップしたことでトップ5独占という記録に至っています。

ここまでコンスタントにリリースするアーティストは現代ではほとんどありません。

その後も2曲同時、3曲同時などはありましたが5曲同時、しかもトップ5を独占するという偉業は2021年まで起こりませんでした。

The Beatles – I Want To Hold Your Hand – Performed Live On The Ed Sullivan Show 2/9/64 – YouTube

ドレイクの快進撃

ドレイクは2018年にアルバム『Scorpion』をリリース。リード曲としてリリースされていた「God’s Plan」、「Nice for What」、「I’m Upset」は既にトップ10入りを果たしており、特に「God’s Plan」は11週連続1位を獲得する大ヒットとなっていたこともあって話題性も高く、リリース初日でSpotify、Apple Musicの1日のアルバムストリーミング回数の当時の世界記録を更新。そしてアルバムからさらに4曲がトップ10入りを果たし、7曲独占という同時ランクイン記録を更新しました。

ただこの週は3位にCardi B(カーディ・B)Bad Bunny(バッド・バニー)J. Balvin(J.バルヴィン)の「I Like It」、そして5位にはMaroon 5(マルーン5)の「Girls Like You」がランクインしていたため、ビートルズのトップ5独占記録は保持され続けました。

Drake – God’s Plan – YouTube

そして記録の更新も期待された2021年、6枚目のアルバム『Certified Lover Boy』がリリースされると、トップ10に9曲を初登場でランクインさせ、同時ランクイン記録を大きく更新しました。当時大ヒットしていたThe Kid Laroi(ザ・キッド・ラロイ)Justin Bieber(ジャスティン・ビーバー)の「STAY」が6位とトップ10をキープしましたが、ドレイクはこの週トップ5独占記録も更新しました。

さらにもうひとつ、ドレイクは『Certified Lover Boy』で「1枚のアルバムからトップ10に送り込んだ曲数」という記録も更新。それまでは『Scorpion』に加えてMichael Jackson(マイケル・ジャクソン)の「Thriller」、Janet Jackson(ジャネット・ジャクソン)の「Janet Jackson’s Rhythm Nation 1814」、Bruce Springsteen(ブルース・スプリングスティーン)の「Born in the U.S.A.」が記録していた7曲という記録も更新しています。

ここまできたらもう次は10曲独占はないと、ほとんどの方がうっすら感じていたかと思います。

そして多くの方はこの記録を更新できるのはドレイクしかいないと思っていたのではないでしょうか。

突然訪れたテイラー・スウィフトの歴史的快挙

既に発表されている通り、最新のビルボードチャートで遂にトップ10を独占する偉業がテイラー・スウィフトによって達成されました。

少し戦略的な話にはなりますが、ストリーミングの比重が強い現在のホット100では、ストリーミングに強いヒップホップ系のアーティストが高いチャートパフォーマンスとなるケースが多いため、おそらくテイラー・スウィフト本人もこの記録は全くの想定外だったことと考えられます。

しかしセールスにストリーミング、そしてエアプレイとすべてのパフォーマンスが高かったことから結果としてトップ10を独占する結果となりました。

テイラー・スウィフトが独占したこと、そしてゲストを含む楽曲が1曲のみでLana Del Rey(ラナ・デル・レイ)だったこともあり、女性アーティストがトップ10を独占するという記録も作りました。

そして当然、「1枚のアルバムからトップ10に送り込んだ曲数」という記録も更新しています。

Taylor Swift – Anti-Hero – YouTube

今後のチャート集計方法は?

今回のようにアルバムから多くの曲がランクインすることはドレイクが『Scorpion』で行って以降、多くのアーティストに見られますが、このような結果を受けても集計方法が対策されることはあるのでしょうか。

ストリーミングは現在、ユニット換算としてセールスよりも価値があるという点、しかしエアプレイによって独占されにくいため一部のアーティストのみしか起こりえないという点、ストリーミングとセールス両方が強いアーティストが多数いるわけではないという点なども考慮するとこれらを受けた変更は行われないように感じます。

今ほどではありませんが一部のアーティストが独占するというケースはいつの時代もありました。エルヴィス・プレスリー、ビートルズ、マイケル・ジャクソン、そしてドレイク、テイラー・スウィフトと、歴史を代表するアーティストだけに起こるケースだと考えれば自然なことなのかもしれません。

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WRITER

酒井裕紀

洋楽まっぷ管理者。米・英の音楽チャートなどのデータを好み、70年代から最新の洋楽までヒット曲なら幅広い知識を持つ。時代毎の良さがある洋楽の魅力を少しでもわかりやすくご紹介できればと思います。

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